原爆タイプという呼称について

トマソンの分類のひとつに「原爆タイプ」というものがあります。

トマソンという芸術概念の発見当初から様々な分類がなされてきており、「原爆タイプ」とは建物に隣接していた物体がなくなったために生じる痕跡などを指すトマソンのことです。

初めて原爆タイプとして認定されたのは、『超芸術トマソン(p. 50-52)』によると、四国松山駅付近で発見された隣家の痕跡が残る建物の壁でした。

その痕跡は火災による焦げ跡のようであったので、広島に投下された原爆の閃光によって人の影が残っていた様子に似ているということでその分類名が名付けられました。

さっきの焼き印といい、これといい、これらは広島を思い出します。原爆タイプという名前をつければ、あまりにもエグイでしょうか。原爆の日に、広島市内の銀行の石段に坐っていた人の影がそのまま焼きついていた。あれです。あれと同じ原理です。
(超芸術トマソン p. 52)

原爆(原子爆弾)は、1945年8月にアメリカ軍によって広島と長崎に投下され数十万人の命を奪った無差別大量破壊、殺戮兵器です。この戦争兵器と同じ名前を芸術作品の分類として使うことは、いささか不適当であるように感じてしまいます。

トマソンを発見して、「これはすごい原爆タイプですね」あるいは「原爆タイプとしてはイマイチだ」などと、感心したり論評することは心の抵抗のようなものがあります。「原爆」という言葉には多くの人命が失われたという記憶があり、「原爆」を芸術の名称とするには、原爆そのものをテーマに制作された作品でしか許されないのではないかという思いも持ちます。

そこで当サイトでは、原爆タイプに違った物件タイプ名を付けようと考えました。

かつて存在していた物体の痕跡を感じるトマソンなので、痕跡タイプはどうか?と思いつきましたが、原爆タイプ物件が登場した『超芸術トマソン(p. 52)』の物件報告で、これらのトマソンについて「建物の影」「影トマソン」「影タイプ」と表現されているので、「影タイプ」と命名したいと思います。

この建物の影が、そのまま人間存在の影のようです。その影を焼き付けたものが、原爆とはまた違う複雑な事情のエネルギーですが。
この渋谷の影トマソンで好きなのは、小窓の位置です。
……
さてこの影タイプに関連したものに写真❺があります。
(超芸術トマソン p. 52)

当サイトではトマソン分類のひとつ「原爆タイプ」を「影タイプ」と表記しています。